支援家の仕事はどうあるべきか

今回は、どのようなスタンスで仕事に取り組んでいるか、仕事論についてのコラムです。

(1)黒子に徹するー業績が良くなったのは経営者のおかげ

会社の現状と共に他社には無い強みを再認識して計画を書き上げること、「気付きを提供する」ことが経営コンサルタントの役割と考えています。業績や資金繰りが改善した際に「磯﨑さんのおかげで…」と言って頂くこともあったのですが、強みを保有していたり実際に改善させたのは企業であり経営者です。

事業計画もある程度の数値計画をこちらで描くこともありますが、最終的には経営者に納得してもらい、ご自身の数字として捉えて頂くことが計画達成の蓋然性を高める上では重要です。業績が良くなったのは経営者のおかげだと考えているため、私自身はご支援先の企業数は日本中小企業診断士協会連合会のHPで更新しているものの、ご支援させて頂いた業績の改善幅については言及していません。経営コンサルタントも十人十色ですが、私は「黒子に徹する」ことを心掛けています。

(2)批評家になるなー実行できるまで施策を落とし込み、伴走する

私はよく医師と患者の例を挙げるのですが、メタボの患者に対して、医師が「定期的な運動をしましょう」と言います。大半の患者は、運動が身体に良いことを知らない訳ではなく、やる気が起きないからやっていないだけです。私も以前体重がメタボの水準になっていた際は医師に毎年の様に言われ、その都度、心の中で「それは分かってるんだけど…」と思いながら、やらない理由(仕事が忙しい等)を探して先送りしていました。

経営者の場合も同様で、「コストを削減して営業利益を確保しましょう」と言ったとしても「そりゃ知ってるよ」と皆思ってます。求めているのは、「これなら出来そうだから、やってみよう」と前向きに取り組めるような施策に落とし込んで、最初の1、2回をこちらで手を動かしてお見せしたり、一緒に伴走して取り組んで、簡単に出来ることまで砕いて成果を実感して頂くこと(小さな成功体験)と考えています。

この過程で必要なことは、⓵どの手法を用いて解決するか、⓶会社の特性を踏まえてどのようにカスタマイズするか、の2点です。例えば、資金繰りに窮している企業に対して、⓵業績改善の事業計画策定と共に新たに資金繰り表を導入するとした場合、一般的なテンプレートをただお渡しするのではなく、⓶受取・支払サイトや口座毎の入出金情報を踏まえて運用や差異把握がしやすい資金繰り表に加工する(具体例も数か月分入力する)ことが大事です。⓶を実現出来るか否かは傾聴のスキルが求められます。当然ながら企業とのコミュニケーションにおいては、専門用語や横文字を並べるのではなく、伝わりやすい言葉を用いること。また、⓶を実施すると相応の時間を要しますが、実際に運用して頂くためには最低これぐらいしなければ企業で活用頂けないというのが実感です。

中小企業の経営者はとにかく忙しい。得意でない領域に対しても枯渇している人的資源の中で取り組まなければならない。支援家は「口と同等以上に手を動かすこと」が重要だと感じています。